はじめに
令和7年3月18日、新たな「消費者基本計画」が閣議決定されました。この計画は、今後5年間(2025年度~2029年度)の消費者政策の基本的な方向性を示すものであり、私たちの生活やビジネスに様々な影響を与える可能性があります。
私たち司法書士法人飯田綜合事務所は、日頃より債権回収や金銭トラブルに関するご相談を多くお受けしております。そこで今回は、この新しい消費者基本計画の中から、特に「債権回収・金銭トラブル」に関連するポイントに絞り、皆様に分かりやすく解説いたします。
消費者基本計画とは?
消費者基本計画は、消費者基本法に基づき、政府が策定する消費者政策のマスタープランです。社会経済情勢の変化を踏まえ、消費者の権利を守り、安全で安心な消費生活を実現するための具体的な施策が盛り込まれています。
今回の計画では、デジタル化の進展、グローバル化、社会構造の変化などを背景とした新たな消費者問題に対応するため、**「消費者政策のパラダイムシフト」**が掲げられています。これは、消費者政策の価値規範に関する考え方を転換し、全ての消費者が多様な脆弱性を有することを認識した上で、安心して安全に取引に参画できる環境の整備を目指すものです。
債権回収・金銭トラブル解決に関する注目ポイント
今回の消費者基本計画において、債権回収や金銭トラブル解決の観点から注目すべき点は以下の通りです。
- 相談・紛争解決体制の強化
- 消費生活センター(消費者センター)や国民生活センターの相談機能を強化し、より専門的なアドバイスや情報提供が受けられる体制を目指します。
- ADR(裁判外紛争解決手続)の利用促進や迅速化が図られます。これにより、訴訟を経ずに、より簡易かつ迅速にトラブルを解決できる可能性が高まります。また、デジタル技術を活用したODR(オンラインADR)の社会実装も推進されます。
- 悪質な事業者に関する情報公開(事業者名など)を進めることで、同様の被害拡大防止と、他の消費者がトラブルに巻き込まれるリスクの低減が期待されます。
- 関係機関との連携強化
- 消費者庁が司令塔となり、国の関係省庁、地方公共団体、消費生活センター(消費者センター)、国民生活センター、さらには弁護士会や司法書士会といった専門家団体、事業者団体などとの連携を強化する方針が示されています。
- これにより、複雑化する金銭トラブルに対しても、関係機関が一体となって、より効果的な被害救済や未然防止策を講じることが期待されます。
- デジタル・グローバル化への対応
- インターネット通販やSNSを通じた取引、海外事業者との取引など、デジタル化・グローバル化に伴う新たな形態の金銭トラブルが増加しています。
- 計画では、こうした新しいタイプのトラブルに対応するためのルール整備や、国際的な連携強化の必要性が述べられており、今後の具体的な施策が注目されます。
- 消費者契約に関するルールの見直し・周知
- 消費者契約法など、消費者と事業者間の契約に関するルールの見直しや、その内容の分かりやすい周知・啓発が継続的に行われます。
- 契約内容の不明確さや、事業者の不当な勧誘による金銭トラブルを未然に防ぐための取り組みが進められます。
司法書士がお手伝いできること
私たち司法書士は、こうした消費者基本計画の動向も踏まえ、皆様の身近な法律家として、債権回収や金銭トラブルの解決をサポートいたします。
- 契約トラブルの予防・解決:
契約書のリーガルチェック、クーリングオフ等の手続き支援
- 債権回収サポート(140万円以下の紛争について※):
○内容証明郵便の作成・送付による請求
○簡易裁判所における訴訟代理(少額訴訟を含む)
- ADR(裁判外紛争解決手続)の利用支援
- その他金銭トラブルに関する相談、法的手続きの書類作成
※ 簡易裁判所における訴訟代理業務や、140万円以下の紛争に関する相談、交渉、内容証明郵便作成等の業務は、法務大臣の認定を受けた認定司法書士の業務範囲となります。
おわりに
消費者基本計画は、国全体の取り組みの方向性を示すものです。個別の金銭トラブルがすぐに解決するわけではありませんが、今後、相談体制の充実や紛争解決手段の多様化が進むことで、泣き寝入りせずに済むケースが増えることが期待されます。
「貸したお金が返ってこない」「売掛金が支払われない」「契約内容がおかしい」など、債権回収や金銭トラブルでお困りの際は、一人で悩まず、ぜひお早めに司法書士法人飯田綜合事務所にご相談ください。状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。
司法書士法人飯田綜合法務事務所
司法書士 高田