この記事の結論(先に要点)
- 「自分で裁判」をする本人訴訟は、IT化で書類のオンライン提出やWeb会議参加ができ、以前より身近になった。
- ただし「システム操作」「Web期日への出席」「主張の組み立て」という壁は残る。
- 「裁判は自分で、書類作成だけ専門家に」という頼み方もできる。全部おまかせか自分かの二択ではない。
「弁護士に頼むほどの金額じゃない」「でも泣き寝入りはしたくない」。そんなとき選択肢になるのが、本人訴訟です。代理人を立てず、自分で裁判を起こす方法のことです。
前回ご紹介したとおり、令和8年(2026年)5月から民事裁判がIT化され、書類のオンライン提出やWeb会議での参加ができるようになりました。これは本人訴訟をする方にとっても追い風です。ただし「全部ラクになった」とまでは言えません。今回は、IT化で本人訴訟のどこが便利になり、どこに壁が残るのかを整理します。
便利になったところ
自宅から書類を出せる
これまで本人訴訟では、訴状や証拠を紙で作って裁判所に持参・郵送するのが基本でした。IT化後は、ご本人でも、裁判所の専用システムに登録すれば、オンラインで書類を提出できます。一度登録すれば、そのIDはその後の別の裁判でも使えます。
出向く回数を減らせる
裁判所が認めれば、期日にWeb会議で参加できる場面も広がりました。遠方の方や、平日に休みを取りにくい方には大きなメリットです。
壁として残るところ
ここからが大事な部分です。
「システムの操作」という新しいハードル
オンライン提出には、まず専用システムへの利用者登録が必要です。氏名・住所・メールアドレスなどを登録し、書類をPDFにしてアップロードする……という作業が出てきます。「パソコンが苦手」「PDF化のやり方がわからない」という方には、ここが意外と大きな壁になります。
なお、ご本人であれば紙での提出も引き続き可能ですが、その場合はオンラインの便利さは受けられないことになります。
Web期日も「自分で出る」必要がある
Web会議で参加できるとはいえ、期日に出席して発言するのは、あくまでご本人です。平日の日中に、自分のパソコンの前で、裁判所や相手とやりとりすることになります。「Web会議=誰かが代わりに出てくれる」ではない点に注意が必要です。
「何を、どう主張するか」は変わらず難しい
IT化はあくまで「手続のやり方」が便利になっただけで、裁判の中身が易しくなったわけではありません。「自分の言い分を、裁判所に通じる形にどう組み立てるか」という、いちばん難しい部分は残ります。
「専門家に頼む=全部おまかせ」だけではない
ここで知っておいていただきたいのが、専門家への頼み方には“幅がある”ということです。
「全部おまかせ」だけでなく、「裁判は自分でやりたい。でも、書類づくりだけは専門家に手伝ってほしい」というニーズにお応えできるのが、司法書士の書類作成支援です。司法書士は、事件の種類や金額にかかわらず、裁判所に提出する書類を作成することができます。
当事務所では、ご本人の言いたいことをじっくりうかがい、それを裁判所に提出できる「訴状」や「準備書面」の形に整えるところを担当します。「どう戦うか」という最終判断はご本人にお任せしつつ、つまずきやすい書類づくりを専門家が引き受ける、という分担です。
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まとめ──「半分は自分、半分はプロ」という選択肢
IT化によって、本人訴訟はたしかに身近になりました。一方で、「システム操作」「Web期日への出席」「主張の組み立て」という壁は残ります。
そのすべてを一人で抱える必要はありません。書類づくりは専門家に任せ、ご自身は判断と参加に集中する。そんな現実的な進め方も可能です。「自分のケースでどこまで自分でやれそうか」を知りたい段階でも、お気軽にご相談ください。
次回は、意外と見落とされがちな「裁判の費用」の話です。印紙や切手による支払いが、電子納付に変わった点を詳しくご説明します。
よくある質問(FAQ)
Q. 弁護士をつけずに自分で裁判はできますか?
A. できます。代理人を立てず自分で進める「本人訴訟」という方法があります。IT化で書類のオンライン提出やWeb会議参加もできるようになり、以前より進めやすくなりました。
Q. 本人訴訟でも、誰かが代わりに裁判に出てくれますか?
A. いいえ。期日に出席して発言するのはご本人です。Web会議で参加できる場合でも、出席そのものはご自身で行う必要があります。
Q. 訴状の書き方がわかりません。書類だけ作ってもらえますか?
A. はい。司法書士は、金額や事件の種類にかかわらず、裁判所に提出する書類を作成できます。「裁判は自分で、書類作成は専門家に」という頼み方が可能です。
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【監修】司法書士法人 飯田綜合法務事務所
司法書士 高田 和征(簡裁訴訟代理等関係業務認定番号 第701136号)
※認定司法書士は、法務大臣の認定を受け、140万円以下の民事事件について代理権を持ちます。
本記事は令和8年6月時点の情報をもとに、当事務所所属の司法書士が確認のうえ作成しています。
最終更新日:令和8年6月19日