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お知らせ AIに訴状を書かせて裁判? 実際に起きた「本人訴訟×AI」を司法書士が読み解く

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この記事の結論(先に要点)

  • 日本でも、生成AIに相談しながら弁護士をつけずに「本人訴訟」を起こす人が現れ始めた。
  • 専門家は「一般的なAIは非公開の裁判例までは把握できず、重要な点を見落とすおそれがある」と注意を促している。
  • AIは事実整理の下書き役として有用。ただし「勝てるか・回収できるか」の見通しは、専門家が確かめてこそ費用倒れを防げる。

「AIに相談すれば、弁護士をつけなくても自分で裁判ができるのでは?」――そんな動きが、いよいよ日本でも現実になってきました。今回は、実際に報じられた事例を手がかりに、債権回収を考える方が生成AIをどう使えば失敗しないかを、司法書士の視点で整理します。

日本でも「AIと二人三脚で本人訴訟」が現実に

2026年7月、朝日新聞は、飲食店でのトラブルをきっかけに、生成AIに相談しながら弁護士をつけずに本人訴訟を起こした男性の事例を報じました。男性は法律を専門的に学んだ経験はなく、日ごろから相談相手にしていたAIの助けを借りて訴状の多くを作成し、簡易裁判所に受理されたと伝えられています。もっとも、相手方は主張を争っており、結論はまだ出ていません。

この事例が示すのは、「専門知識がない人でも、AIを使えば裁判の書類まではたどり着ける時代になった」という事実です。実際、書類を整える力についてはAIの得意分野で、以前の記事でも、海外で弁護士なしの書類が読みやすくなったと歓迎する声を紹介しました。裁判のIT化で手続のハードルが下がったことと相まって、「自分でやってみよう」という人は今後さらに増えるでしょう。

参照:朝日新聞デジタル「AIの時代」(2026年7月25日)。本記事は、同記事で報じられた事実の要点のみを当事務所が要約・参照したもので、記事本文・写真等の転載は行っていません。係争中の事案であり、記載はあくまで一方当事者の主張を含む報道内容に基づきます。

便利さの裏で、専門家が指摘する「落とし穴」

ただし、「書類が作れる」ことと「勝てる」ことは別物です。この点について、同じ報道の中で法学の専門家がはっきりと注意を促しています。

一橋大学法学研究科の小林一郎教授は、一般的な生成AIだけを頼りに裁判をすることには注意が必要だという趣旨の指摘をしています。裁判で結果を目指すには過去の裁判例を踏まえて主張を組み立てることが重要になりますが、広く使われている生成AIは、ネット上で公開されていない過去の裁判例までは学習できていない可能性がある。だから回答がもっともらしく見えても、重要な点を見落とすおそれがあり、利用者がAIの限界を理解しておくことが欠かせない、というわけです。

あわせて制度面の論点もあります。日本では、資格を持たない者が報酬を得る目的で法律事務を行うこと(いわゆる非弁行為)は禁じられています。もっとも、これは「法律事務は弁護士だけのもの」という意味ではありません。認定司法書士は、140万円以下の民事事件について、法務大臣の認定を受けて代理人となることができます。また、金額にかかわらず、裁判所に提出する書類の作成は司法書士の業務です。つまり、資格を持つ専門家が、それぞれの範囲で法律事務を担う仕組みになっています。問題になるのは、こうした資格の裏づけがないまま法的なアウトプットが出される場合です。実際、法務省も2023年、契約書の作成・審査をAIで支援するサービス(リーガルテック)について、内容によっては弁護士法に触れうるとの考え方を示しています。AIによる法的なアウトプットを「資格を持つ誰が最終的に確かめ、責任を負うのか」は、これから整理が進んでいく段階の問題です。

債権回収で、これが「費用倒れ」につながる理由

この話は、海外や特別な事件の話ではありません。「お金を返してもらいたい」と考える、身近な債権回収でもそのまま当てはまります。

たとえばAIに事情を打ち明ければ、それらしい督促文や訴状の下書きは作れるかもしれません。けれど、「その請求はそもそも法的に通るのか」「証拠は足りているのか」「相手はどんな反論をしてくるのか」「回収できる見込みはどれくらいか」――こうした肝心の見極めを誤れば、時間もお金もかけたのに回収できない、いわゆる費用倒れになりかねません。とくに少額の請求では、進め方を誤ると、得られるものより手間や実費のほうが上回ってしまうこともあります。書類が立派に整っていても、勝てなければ意味がないのです。

そしてもうひとつ、報じられた事例が私たちに教えてくれる、あまり語られない現実があります。それは「訴状を出したあと」に本人を待っている壁です。

AIで訴状は作れた。でも、本番は「受理された後」から

今回の事例で、男性は訴状の作成まではたどり着き、簡易裁判所に受理されました。ここで見落とされがちなのが、裁判は、訴状を出して終わりではなく、そこから始まるということです。AIが手伝えるのは主に「書類を整える」ところまで。受理された後に本人が独りで向き合う場面は、AIが代わってくれるわけではありません。

具体的には、こうした壁が残ります。

  • 期日への出席は、あくまで本人。 Web会議で参加できる場合でも、平日の日中に、自分で出席して受け答えするのはご本人です。「AIが代わりに出てくれる」わけではありません。
  • 相手方の反論には、書面で応じていく必要がある。 その場で即答する必要はありませんが、相手が主張を争ってくれば、次回期日までに準備書面で反論を組み立てることになります。争点がずれれば、せっかくの訴状も的を外してしまいます。
  • 電子送達を選んだ場合の、期限管理。 本人が専用システムに登録して電子送達を受ける届出をすると、判決書などが電子的に届き、閲覧した時か、通知から一定期間が過ぎた時の早いほうで「受け取った」ことになります。気づかず放置しても期間の経過で受け取り扱いになり、そこから控訴などの期限が進むため、一人で抱えると思わぬ失敗につながりやすいところです(電子送達を選ばなければ、従来どおり紙で郵送されます)。

AIは「訴状を書く」まではめざましく力を貸してくれますが、この“受理された後”の実務は、AIの守備範囲の外です。ここを見誤ると、入口は突破できても、その先で立ち往生しかねません。

「全部おまかせ」でも「全部独り」でもない、現実的な進め方

では、どうすればいいのか。「弁護士・司法書士に全部おまかせ」か「AIを頼りに全部独り」かの二択で考える必要はありません。そのあいだに、現実的な進め方があります。

司法書士は、事件の金額や種類にかかわらず、裁判所に提出する書類を作成できます。当事務所では、ご本人の言いたいことをうかがい、それを訴状や、相手の反論に応じた準備書面といった「裁判所に通じる形」に整えるところを担当します。「どう戦うか」の最終判断と、期日への出席はご本人にお任せしつつ、つまずきやすい書類づくりを専門家が引き受ける――「書類はプロ、出席と判断は自分」という分担です。AIのたたき台を、専門家の目で確かめてから進めたい、という使い方にも対応できます。

💡 関連サービス:債権回収 AI見通し診断・相談サービス(動き出す前の見通しの確認から、本人訴訟に向けた書類作成の支援まで)

まとめ──AIは「入口」まで、その先は人と組む

生成AIは、自分の言い分を整理し、訴状のたたき台を作る入口までを、驚くほど身近にしてくれました。日本でも本人訴訟にAIを活用する人が現れ、その流れは広がっていくでしょう。

ただ、報じられた事例が示すのは、「訴状が受理された時点は、ゴールではなくスタート」だということです。受理された後の期日・反論・期限管理は、AIの守備範囲の外にあります。だからこそ、入口はAIを賢く使い、その先の実務は専門家と組む――この分担が、独りで立ち往生しないための現実的な道です。「AIで下書きはできたけれど、この先どう進めれば」と迷ったら、お気軽にご相談ください。


よくある質問(FAQ)

Q. AIで訴状を作って提出すれば、あとはAIが裁判を進めてくれますか?
A. いいえ。AIが手伝えるのは主に書類を整えるところまでです。訴状が受理された後の期日への出席や、相手の反論への対応は、ご本人が行う必要があります。

Q. AIで作った訴状の下書きがあります。続きを手伝ってもらえますか?
A. 承ります。司法書士は金額や事件の種類にかかわらず、訴状や準備書面などの書類を作成できます。「裁判は自分で、書類作成は専門家に」という進め方が可能です。

Q. 裁判所からの電子的なお知らせを見落とすと、どうなりますか?
A. 電子的なお知らせは、内容を見た時やダウンロードした時のほか、通知から一定期間の経過でも「受け取った」ことになります。その時点から控訴などの期限が進むため、見落としに注意が必要です。


📎 参考

【監修】司法書士法人 飯田綜合法務事務所

司法書士 高田 和征(簡裁訴訟代理等関係業務認定番号 第701136号)
※認定司法書士は、法務大臣の認定を受け、140万円以下の民事事件について代理権を持ちます。

本記事は令和8年8月時点の情報をもとに、当事務所所属の司法書士が確認のうえ作成しています。引用元の報道内容は係争中の事案に関するものであり、一方当事者の主張を含みます。
最終更新日:令和8年8月1日

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